大東流の術及び技に於ける要

大東流の術及び技に於ける要は、三つあります。

一つ目は、先にも書きましたが

敵の身体を崩そうとしない

ことです。敵の身体を崩そうとすると、必ずその力が敵の身体に伝わります。力が伝わった瞬間、敵はそれ以上崩れないように必ず体勢を守ろうとし、さらに反撃しようとします。従って 合氣を外す という理合が非常に重要となります。合氣を外すことで、結果的に敵の身体が崩れることになり、合氣を外し続けることで、敵の身体が崩れ続けます。しかし、傍から見て身体が崩れているので、身体を崩していると勘違いしてしまいます。合氣を外すことで結果的に身体が崩れ、崩れ続けることと、最初から身体を崩し、崩し続けることとは、全く異なります。合氣を外せば、余計な力を使わず、その場を動かずに敵を詰めることが可能ですが、身体を崩し、崩し続けようとすると、合気道のように非常に大きな力が必要になりますし、大きな動きも必要になります。ここは絶対に勘違いしてはいけないところです。敵の身体を崩すのではなく、敵の氣を外すだけなのです。

二つ目は、

その場を動かない

ということです。動く場合は、その場にいると命に関わる時、のみです。それ以外は動きません。動くということは、そのこと自体隙を生みます。動くと必然的に身体の重心が崩れますので、自ずと身体の体勢が崩れ、それにより命を落とす可能性が非常に高くなります。それを防ぐには、その場を動かないことです。そして、大東流の理合は一刀流と同じ 合氣を外す ということですから、効果的に合氣を外すためには、動かない方が良いのです。因みに、一刀流では、敵の身体を崩すことは一切行っていません。ただ単純に敵の氣を外しているだけです。

そして三つ目は

敵が掴んだ手の位置、敵の日本刀の柄を掴んでいる手の位置、自分が掴んだ敵の手首の位置を一切変えない

ことです。敵に剣術の手の内で自分の手首や襟等を掴まれた際、その掴んだ敵の手の位置を変えると、敵はそれを察知します。位置が微妙に変わっただけでも、敵はそれを察知し反撃に移ります。 剣術を修行しているので、手の感覚が物凄く鋭いんですね。 術を遣う際、敵の日本刀の柄を掴んでいる手の位置がほんの少しでも変われば、それを察知し、即座に反撃されます。 現在は、大東流でも合気道でも くそ握り が大前提になっていますので、敵が掴んだ手の位置を前後左右上下に容易に動かせますし、それにより容易に敵を崩せますので、世に知られている合氣上げも術も、敵が掴んだ手の位置を大きく前後左右上下に動かすものになっていますが、剣術の手の内で掴まれたら、それは絶対に不可能です。 崩せません。 崩せないどころか、確実に反撃されてしまいます。 真の大東流では、敵が掴んだ手の位置を一切変えずに合氣上げ、切落の遣いを行います。 だから、敵は反撃をすることも出来ずに、詰められてしまうのです。